【深読】旧H×H1話

※注意点
このシリーズはハンターハンターのアニメを深読みして、自分なりの感想をまとめたものになります。
そのため、主観的な意見が多く、証拠や根拠はあまりありません。
私が見て感じたことや気づいたこと、大切だと思ったことなどを正直に書いているだけのものですので、
十分理解した上で読まれることをおすすめします。
こういった感情や見方で見る人もいるのだと思っていただけたらば幸いです。

第一話「旅ゆく少年×風の音を残して」
 序盤

  ・まずはゴンの部屋の窓から見える景色からはじまる。
    キーワードとして「山」とは「父親」(ゴンの祖母が山が父親代わりと言っているため)であり、その手前に描写されている風鈴はオリジナルだがキーアイテムになっており、こちらは「ゴン」自身を表現しているものと考えられる。
→すなわち、この一枚絵だけで父親とゴンの何らかの物語が語られることがわかる。もちろん、初見時では祖母のセリフもまだ聞けていない上、風鈴がゴンの部屋にあるものでキーとなる場面に出てくることもわからないのだから、見抜けない部分ではある。

・次のシーンではミトがワインの瓶に乾杯する。
 後々の話にはなるが、ジンの残していった箱にも、同じようにワインで乾杯をするシーンがあることから、
 このワインの瓶もまた、ジン関連の表現を含めている可能性はある。
 つまりはワイン=ジンというイメージがある。写真がそばに置いてあることもそれを後押ししている。
 ジンはこの店のワインがお気に入りだった可能性も。
 そうであるならば、カイトがのちのシーンでワインをわざわざ買っていったのは、
 カイト自身のためでなく、ジンに会った時の手土産の可能性がある。
 
 さらに言えるのはミトが主人公のゴンよりも先に登場している点である。
 思い悩むミトをゴンよりも先に出すことで、この話は「ミトの話でもある」と認識させている。

・釣りをするゴン
 自然と一体となって釣りをするという印象的な美しい絵が魅力的なシーン。
 ここでは、ゴンが山育ちで釣りも得意であるということが一発でわかる。また気配を消す技術に長けていること、大木に登れる身体能力の持ち主だということもわかる。つかみとしては十分である。
 釣りの先を見るゴンとゴンのいる山を見つめるミトのカットが繋がることで、2人に何らかの関係があることが視聴者にわかるように構成されている。

ゴン幼少期

・カイトが船に乗ってやってくる
 ここで重要なアイテムとなっているのは船。
 船は出発や旅立ち、方向などをイメージさせるもの。それにカイトが乗っていることから、カイトがゴンの道標になり、旅立ちのきっかけを与えるキーパーソンということを示唆していると言える。

・序盤から時が遡っているということは、ミトの洗濯物のゴンの服が小さいことからも伺えるが、特に何年前の出来事に戻ったのかや、補足が入るわけではないところが、想像を掻き立たせスムーズな場面展開にも繋がり見ていて気持ちがいい。

・「あの子には野山が父親がわり」
・「約束したのよ」
・「父親の代わりにはなれない」
 重要なセリフがミトと彼女の母親(おばあちゃん)の間の短いやり取りで交わされる。
 序盤の山が父親を連想させるとするのはこのセリフから。
 また「約束」はかなり重要なキーになっており、この話のテーマであるとも考えられる。おいおいわかることだが、「嘘」もまたそうであり、この2つの言葉でミトもゴンも成長するからである。
 父親の代わりになれない、という部分はミトが押し込めている気持ちの根源とも言える部分であり、こちらもミトの心情を把握するには避けて通れない部分である。

・カイトがくじら島で探索をする
 海を見据えてジンのカードを持つ場面から、
 ①ジンが海の外へ旅立っていること
 ②ゴンがそのカードを持って同じく海の外へ旅へ出ることへの暗示が仄めかされてる。

・カイトがゴンを助ける
 キツネグマを処分するシーンを劇的なものにせず、あっさりと表現したのは、おそらくカイトの優しさの表現ゆえと考えられる。
 「苦しまず、一瞬で殺す」が実行できる実力があり、
キツネグマを苦しませたくなかった彼の心情が理解できる。

・ゴンがキヅネグマを助ける
 ゴンはカイトから子供のキヅネグマを守り、自分が育てると宣言する。
 ゴンの責任感の強さや意思の固さが垣間見え、根本的に優しい心根があると伺える。
 このシーンで初めてゴンのセリフが出てくるが、ここだけで性格の核がわかり、
 絶対に嘘はつかない、約束は守る、いったことは撤回しない
 などが伝わる。だからカイトも子供のキツネグマを殺さなかったのではと思える。

・ミトの教えを守るゴン
 ミトの教えを遵守し、反抗的な態度も見せない。これは後々にハンター試験を受けると決めた=ミトに初めて反抗するシーンと相反する場面ともいえ、ここで「嘘はつかない」という2人に通じるテーマが明確に提示される。

・親のキツネグマを埋めるシーン
 まず子供にミルクを与えてから、穴を掘るところから、お腹が空いているだろう子供の心配を優先させてやる心根が表現されている。またさらに巨大な穴を1人で掘れる基礎体力の高さも窺える。
 墓にはまだ十字だけだったが、
 カイトと話をしながら場面カットが複数起きる中に一瞬花が映る。
 それがのちに墓に供えられていることから、途中摘んであげたのだなとわかる。
 さらに途中の釣りのシーンから、のちの魚を子供に与えるシーンがあることで、途中子供のために釣りをしていたのだということもわかる。

・ミトとの会話
 ゴンがカイトからジンのことを聞き、ミトにジンのことを聞くまでをカットしてくれているため、急にジンのことを知りたがるゴンに動揺を隠せないミトの表現が伝わり、感情がわかりやすい。
 ジンのことを聞かれ、怖くなったミトが夜にゴンが部屋にいるか確認している。いつもと変わらない様子に安堵するシーンだが、ミトがゴンを手放したくない気持ちが垣間見える。

・カイトがお店に来る
 ワインはおそらくジンに渡すための物。ワインはジンを表現しているのであれば、土産としてジンに渡そうと思い購入した可能性がある。
 また、カイトの「こっちこそ迷惑をかけた」という言葉からして、ゴンの家の店と知っていたからとわかり、ジンがこの店のワインを気にいっていた可能性は高まる。

・ジンのものを燃やそうとするミト
 どうしてもゴンがジンのようになって欲しくない、どこにも行かず、そばにいてほしいという心情が伝わる。
 おばあちゃんの「後悔するよ」はゴンの父親のものだから燃やせばあの子に顔向けできないよ、という意味のほかにも、ジンを少しでも意識しているミトの胸中を慮ってのものだと思われる。無意識のうちにジンを意識している(矛盾しているが)ミトがジンにゆかりのあるものを燃やせば、後悔することをおばあちゃんは見抜いていた。

Bパート、成長したゴン

・ミトにハンター試験をうけたいと懇願するゴン
 ミトを説得する場面だが、ここは影とアングルをうまく使っている。
 このシーンで目を見張るのはやはり、見上げる構図(アオリ)を使っていることで、
ミトにとって重厚感のある重いシーンとわかり、上部に影を差し込む効果を使い、ゴンの言葉がミトにどれだけの圧をかけたかがよくわかることだろう。

・主を釣ろうとするが失敗し、夜中に戻ってくるゴン
 「また失敗ね」「そうまでして」「諦めたら」等のミトのセリフから、ゴンが何度も何度も挑戦していることがわかり、ゴンの意志の強さが垣間見える。
 ここで特徴的なのは、ミトがはじめてゴンに気持ちをぶつけたことだろう。
 「あんた」呼びをすることでゴンにジンを重ねてしまい、ゴンへの拒否感や拒絶感のようなものがあらわされている。
 そしてゴンに「(ジンが)捨てたのよ」と告げることで動揺したゴンを見逃さず、畳み掛けるように、心の奥底にしまっていたジンのことと、ゴンの母親(ミトの身内)のことを言う。
 「家族まで、子供まで捨てて」とのセリフは人でなしと思うジンのようになろうとしているゴンを責める一方、説得しているようにも感じる。
 しかし、それは逆効果でゴンは「子供を捨ててまで続けたい仕事、それだけすごい仕事なんだ」と解釈していまう。ゴンはおそらくここで尊敬の念を抱いたのだろう。傷付かずむしろ尊敬するゴンの精神力の高さと独特な感性の持ち主が描かれているとえる。
 「やっぱりあいつの子供だわ」ミトは吐き捨てるように、残して出ていく。ここで傷つける言い方をしてしまったのは、ミトはジンのせいで心に傷を負っているのに大切に育ててきたゴンは、そのジンを追って自分から離れていこうとしているのが、なんとも許せなくて意図せず強い口ぶりになってしまったと思われる。
 ↑のシーンは声の演技の効果も大きいが、2人の感情の正反対さや、繊細な感情がくみとれ、この話の転換点のような、重要な場面のひとつともいえるだろう。

・ジンのロッドを渡す
 ゴンを認め、謝罪の意味も含まれているのかもしれない。
 少しずつ、ミトの心の整理ができていると解釈できる。

・服をカットしようとするミト
 ゴンが破ってしまった服を小さかった頃のゴンの服で直そうとするミトだが、できなかった。
 「大きくなった」という現実が、ゴンの成長が、嬉しくも寂しくもあるという、親ならば持ってしまって当たり前の感情をミトもまた感じていると伝える印象的なシーン。
 育ての親とはいえ、本当にゴンの親であろうとしてきたことがよくわかる。

・沼の主を釣り上げるゴン
 見事に物語全体に漂っていたキーワード「約束」を回収したシーン。
 自分が言った「約束を守れないような人間になるな」がミトに跳ね返り、現実が突きつけられてしまう。
 ゴンを褒めもせず、黙って許可だけ出したのは、ミトの心がそれで精一杯だったことが窺える。

・主を返すゴン、掃除をするミト
 きちんと沼の主を沼に戻す点はゴンの生き物への優しさを表すと同時に、主への敬意も感じられる。
 一方でミトはゴシゴシと強めにテーブルを拭いている。まるで、心のモヤモヤをかき消すような描写が感じられ、ミトの心中を思ってしまう。
 お墓の花が育ち群生した場所で、ゴンは大きくなったコン太(コン)に会う。
 冒頭からここまで時が流れたことが垣間見え、成長したのだなと実感できるほっこりするシーンに仕上がっている。

・夜ミトがカバンを用意してから太陽に照らされる中ゴンを見送る
 ゴンが眠っている姿を見ながら、ミトが謝罪と本当のことを告白をするシーンが、綺麗に太陽に照らされたゴンのシーンへ繋がる何とも美しいシーン。まさにクライマックスと言える感動的で最も重要だと思われる場面だ。
 夜の闇の中泣いているミトという暗いイメージを、太陽という光を使い、ゴンの明るさに包まれるイメージにうまく場面展開しており、場面の美しさも相まって印象に残る。
 「ミトさんの匂いは母さんの匂い・ミトさんは母さんと一緒だ」というセリフから、ゴンは本当の母親に関心がないことが一話目にすでに表現がされており、これは全く崩れることはない。ゴンは一途で自分の想いに真っ直ぐであることや、嘘を見抜けるような洞察力もあるとわかり、普通の子供とは違うのだなと視聴者に思わせる。
 その後ボートで川を下り、海へ。冒頭で示唆されていた旅立ちをきちんと回収。

エピローグ

・仕事中、あの風鈴の音が聞こえる
 窓が閉まっているはずのゴンの部屋に吊るされている風鈴の音が聞こえ、ミトは思わず部屋へ入る。
 誰もいなくなってしまったゴンの部屋を見て涙ぐむも、しっかり前を見て「いってらっしゃい」と呟く。
 あれほど逡巡し思い悩んでいたミトがきちんとゴンを見送ることができ、そこからミトも成長したのだと思わせるラストで締めくくられる。

まとめ

 旧の第1話は私にとって印象深い場面が多く、また画面や絵、演出で見せるところも散りばめられ、意味深なものを感じ取れた。
 1話まるまる使ったのは、単なる時間稼ぎもあるかもしれないが、カイトの出会い、ミトの気持ち、ゴンの性格が丁寧に描かれていることで、その後のエピソードにも影響を与えている作りとなっており、掴みの1話としてはばっちりだったのではと思う。
 個人的には太陽に照らされたゴンが顔を上げるシーンが印象に残る。その後の2人が抱きしめ合う場面も美しい。何度見ても優しい気持ちになる、素晴らしい初回と言える。

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