【深読】旧H×H7話

第7話「トラウマ×限界×甘いワナ」

※注意点
このシリーズはハンターハンターのアニメを深読みして、自分なりの感想をまとめたものになります。
そのため、主観的な意見が多く、証拠や根拠はあまりありません。
私が見て感じたことや気づいたこと、大切だと思ったことなどを正直に書いているだけのものですので、
十分理解した上で読まれることをおすすめします。
こういった感情や見方で見る人もいるのだと思っていただけたらば幸いです。

※また、今回はアニメオリジナルの要素が強く、原作や冨樫先生の発言など確かな証拠がないため、憶測でしかわからない部分が多いです。ただ、旧アニメの解釈をテーマにしているシリーズであるので、ここではその憶測をもとに感想を進めています。ご了承ください。

Aパート

・倒れたトンパを見つけて駆け寄るクラピカとゴン
 「こんな罠は初めてだ」と聞いても、レオリオのことを第一に考え、躊躇いなく分岐に向かう2人からはレオリオをなんとしても助けるということしか頭になく、「罠」とわかっても飛び込んでいけるほど、レオリオを仲間として扱っていることがわかる。

・罠にハマってしまうニコル
 原作ではアモリ三兄弟に潰されるニコルだが、ここでは樹液の罠にハマってしまい、みんなから見下される恐怖こそが彼のトラウマとして強調されている。

・一方で、レオリオはありえない人物に声をかけられる。
 亡き友、ピエトロであった。ピエトロが黒塗りであることから、レオリオのトラウマの深さ、ピエトロがいかに彼の心に影を落としているかを表しており、視聴者側にもどこか恐怖を感じさせる。

・海辺の街に鐘の音が響く
 おそらくレオリオの故郷であろう場所。海は生命の根源、命が生まれる場所であり、そしてどこで死のうが流れ着く死の場所でもある。「ピエトロの死」と「人を救う道」を背負うレオリオにはぴったりの場所であり、鐘の音からは教会をイメージさせる(鐘のある建物の上部に十字架があることからもそれは確かであろう)が、生死が表現されたこの街はレオリオにとってふさわしい故郷であるといえよう。

・青と白の印象的な街でレオリオはピエトロを追いかける
 青と白という二色をうまく配色し、シンプルな街並みにすることで、逆に印象に残るようにしている。次に来るピエトロの部屋でピエトロの死体が出てくるが、今度は対照的にやけにリアルに描かれており、上記の街のシンプルさと反対の表現をすることで、「死」を突きつけられるレオリオのショックをより身近に感じさせられる。

・ピエトロに言葉責めを受けるレオリオ
 罵るわけではなく、「助けてくれよ」「治してくれよ」と訴えることで、よりレオリオの心にヒビが入る。これは「レオリオの」トラウマという観点からみると、レオリオの心の奥底ではピエトロを助けてやりたかった、治してやりたかった、という感情の裏返しであり、それが引き摺り出され、ピエトロに言わせることで突きつけられていると捉えられる。

・クラピカもまたトラウマに支配される
 幻影旅団に対する「怒り」よりも、「やめてくれ」という言葉から、仲間の死体や仲間の惨殺を見せられていることがわかり、クラピカにとって復讐はあくまで心の支えであり、本当の心の中では仲間の死そのものが彼の深い傷となっていることがわかる。(のちの描写だが、本当にやりたいことは緋の眼の回収だと語っている場面があることからも、旅団の殲滅より仲間を優先したい気持ちが強いことがこのシーンでよくわかるよう、できている)

・真っ赤に染まるクラピカの瞳から、夕焼けに染まる海へのシーンの展開
 赤から赤へ。シーンの切り替えが色で行われていることがやけにうまく、印象的。そして、おそらくピエトロを火葬しているレオリオ。その火の色もまた赤く、先ほどのクラピカの過去にも燃え盛る火が出てきていた。2人の心の傷の深さが「赤」というおどろおどろしい血の色でも火の色でもあるこの色を使うことで表現されている。

・キルアがスケボーで戻ってきて、トンパに会う
 「お前、引っ掛けたな」
 この時点でキルアは3人がトンパの罠にハマったことを見抜く。のちの「癒やし杉なんて木はない」という発言から3人がトンパに騙されるのを、ゴンとクラピカを見送る時には気づいていたのだとわかる。
 少し逡巡していたのか、時間差で追いかけて戻ってきたキルアからは、やはりどこかで3人(もしくはゴン)が気になり放って置けなくなったのかもしれない。ただの興味本位だから、というのもあるだろう。
 トンパにキルアは「薄汚い手を使う奴はいつか必ず薄汚い死に方をする」と述べる。暗殺業を生業としていたキルアにとっては経験上の本当のことであるが、キルアの正体をまだ知らない視聴者には「やはりどこか危ない子だな」というイメージがつきまとう。
 しかし、結局トンパを見逃し、そのまま去って行くところや、3人の後を追うところからは「危ない」というイメージからはかけ離れた行為であり、キルアへの興味をそそらせる。

・ピエトロと話すレオリオ
 「金さえありゃあ」ともらすレオリオ。ここで彼の真意が汲み取れる。金が目的だったのは、人のためであったわけで原作と比べるとかなり独特な表現でレオリオのことがわかる。
 告白をしてピエトロの方を向くと、ピエトロは骨になっていた。
 火葬をしたから骨の状態になったということもあるが、骸骨という恐ろしい見た目の彼からは、レオリオの負い目の深さがわかる。

・苦しむクラピカに蹴りを入れるキルア
 「惑わし杉の樹液」のことを説明していることからも、おそらくある程度のショックを与えると正気に戻ることをキルアは知っていたのだろう。容赦のない一撃を加えられるキルアの甘さのない性格や身体能力の高さも窺える。

・名前を教えるキルア
 しっかり2人を助けて、視聴者がキルアの好感度や彼への好奇心など芽生えてきたところで、キルアはクラピカとゴンに名前を教える。
 ばっちりと視聴者の心を掴む場面になっているといえ、名前が出てくる絶好のタイミングだろう。

Bパート

・爆弾を持っているキルア
 爆弾といえば、キルア周辺で考えられるのは兄弟のミルキ。おそらく彼の部屋から盗んだかどうかしたのかもしれない。とにかく、爆弾なんてものを持つキルアを見て、普通の子供ではないことに拍車がかかる。これは推測だが、爆弾を使ったのは壁を壊すことと、また爆風で強制的に飛ばしてもらうことで距離を縮めることが目的だったのだろう。

・ピエトロに問いかけると「死ねばいい」と返されるレオリオ
 その誘いにレオリオはついていってしまう。1人にしないでくれ、という彼の言葉を無下にできないところに、彼の優しさが垣間見える。「ピエトロを1人にさせたくない、いっそ、オレがそっちへいってしまえば」と思い、迷ったのかもしれない。
 ついていくと、見渡す限りの草原にでる。今度は海辺と一変して山の風景になる。レオリオの気持ちが、故郷の海から離れ(トラウマの街から離れ)、レオリオの心境の変化が風景の変化として表現されている。
 足を止めたレオリオから発せられた言葉は「オレはこのまま何もせずに終わりたくねぇんだ。お前と同じ病気の子供を治してやりてぇ。そしてその子の親に金なんていらねぇって言ってやりてぇ。そのためにオレは生きて医者になりてぇんだ」といったもので、ついにレオリオは言いながら泣き崩れる。
 レオリオの本気、涙が出るほどの決意の高さが窺え、「許してくれ、ピエトロ」という言葉が続く。きっと引っかかっていたのは、ここだろう。「ピエトロは助けられなかったのに、後を追うこともせずに、それなのに、他の子供を人々を助けたいなんて、彼は許してくれるのだろうか」と。
 けれど、ピエトロは「なれよ、レオリオ。立派な医者にな」と返してくれる。
 まだトラウマは解けていないはずなのに、だ。レオリオがおそらくトラウマを克服できたということ、そして、亡き友がトラウマに苦しむレオリオを見かねて、そっと助けてくれたのかもしれないということが推察できる。様々な思いが溢れる、非常に感動的な場面だ。

・レオリオを助け、壁を壊しサトツの前に現れた4人
 トンパの驚きっぷりや、サトツの「大したものですよ」というセリフから、ゴンたち4人への周りからの評価が上がったことがわかる。
 トンパに怒りを露わにするレオリオに対して、ゴンとクラピカはレオリオを制し、キルアは興味がなさそうに視線を伏せている。レオリオの怒りはもっともであるが、今はテスト中。冷静さも必要なことを表現しているのだろう。

・キルアの名前を聞いてから、話しかける際には毎度名前を呼ぶゴン
 すでに、親近感を覚えており、友人や仲間の1人と認識しているのだろう。そして、もっと仲良くなりたいという気持ちの表れであるのかもしれない。「名前を呼ぶ」という行為が、この話の締めくくりのキルアのセリフにもかかっていて、良い小さな伏線である。

・レオリオの話を聞いてクラピカは「なれるといいな」と述べる。
 ハンターになると豪語するレオリオに「いいや、医者にだよ」と付け足すのだが、この時の声音は随分と優しい。0巻ではパイロの目と足を治すために医者を探すという目的も持って旅に出たクラピカだ。このセリフは本心からと捉えていいだろう。そして、自分も応援したいと考えている。
 レオリオからは「そういうことを澄んだ瞳で言うんじゃねぇ」と言われてしまうが、それはつまり、澄み切っている邪念のないまっすぐな瞳だと言うことで、クラピカは本気でレオリオが医者になって欲しいと思っていると考えられる。

・ゴンとキルアの会話
 「父さんは写真でしか知らないんだ。でも、それでいいんだ。オレ、父さんみたいなハンターになりたい」これを聞いて、何か思う節のあるキルア。なんでもないと言っていた出口を見て、何か考えている。父のようになりたいと思ったことがあったのかなかったのか、このシーンだけでは汲み取れないが、ゴンから何かしら自分と違うものを感じたと思わせるシーンになっている。
 「ねえ、それ、そのうち貸してくんないかな? だめ?」
 無邪気に言うゴンを見て、そんなことを言ってくれる同い年の少年の存在に心が動かされたのかもしれない。求めていた友人ができるかもしれないと少し心が震えたのだろう、
「その釣竿、貸してくれたらな。ゴン」
 と、初めて名前を呼ぶ。
 何度も名前を呼んでいたゴンへ、ここでようやくキルアが応える。
 まさに友人への第一歩を築いた印象深いシーンと言える。

まとめ

今回の話はトラウマを見せられるという流れで、原作にはないレオリオの過去をドラマチックに描かれているところがとても印象に残る。初見時、私は中学生だったが、それでもこの時の記憶は強烈に覚えていた。それほどまでに、青と白の海辺の街、ピエトロの存在感、レオリオの覚悟が上手に合わさり、視聴者が子供だろうが大人だろうが関係なく痺れさせる場面になっているのだと言えるだろう。
 今見返せば、レオリオが主軸になっていると見せて、きちんと前話に初登場したキルアをしっかり立たせてあることも上手い構成だといえよう。爆弾を使ったり、ゴンでも知らない樹液の存在を知っていたり、と見せておいて、ゴンと心を通じ合わせる描写を入れていることから、きちんとキーパーソンの役割を担っている。
 と言いつつも、ゴンやクラピカが目立っていないわけではなく、2人を立たせる役回りで活躍している。これから4人がそれぞれ活躍してくれるのだとわかる、主人公は4人なのだとわかる回と言えるかもしれない。

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