【深読】旧H×H12話

第12話「良い子?×悪い子?×キルア」

※注意点
このシリーズはハンターハンターのアニメを深読みして、自分なりの感想をまとめたものになります。
そのため、主観的な意見が多く、証拠や根拠はあまりありません。
私が見て感じたことや気づいたこと、大切だと思ったことなどを正直に書いているだけのものですので、
十分理解した上で読まれることをおすすめします。
こういった感情や見方で見る人もいるのだと思っていただけたらば幸いです。

Aパート

・キルアの気配断ちからの奇襲を難なくかわすネテロ。暗殺者のエリートであるキルアがボールにかすりもできないことが、ますますネテロの実力を証明している。
 また、キルアの技を見て、アニタは父親を殺したのはキルアだと確信し、眼光を強める。
 それを見抜いたネテロは「手出し無用」と釘を刺す。
 ゴンとキルアの勝負中でもアニタの殺気によく気がつき、しっかり注意まですることができるのはさすがといえよう。

・「やる気が出てきたかな」と今までの態度を改めるキルア。何とか追い詰めたものの、ボールを顔面にお見舞いされ、抗議するも「あれはパスじゃ」ととぼけるネテロ。完全に弄ばれている。
 キルアもゴンに「とんだ食わせもんだぜ」と注意を促す。ネテロの飄々としている態度から、こういうものは言ったもの勝ち、という思考や心底楽しんでいる様子が伝わってきてとても良い。

・次はゴンが向かって行くものの、高すぎたジャンプで頭を強く打つ。
 ネテロは消えたゴンに一瞬驚くも、うめくゴンを見、またキルアの「せっかく爺さん油断してたのに」との言葉を聞いて、「まったくじゃ。惚けた顔して、それなりに考えておるようじゃな」とゴンを見直す。
 しかし、すぐに気を取り直すゴンの立ち直りの速さと前向きさはさすが。

・休憩するキルアに、アニタは「罪滅ぼしのつもりならやめてちょうだい」と怒る。
 それに対し、「そんなんじゃない。自分の力を試してるだけさ。オレが捕まえたいのはボールでも爺さんでもない。親父の背中だからな」と述べる。
 原作や新のアニメにもあった、選挙編のキルアの家族間相関図からいうと、キルアは父親を尊敬している。その心が、背中を捕まえたい=追いつきたい=越えてやるんだ、という思いにつながるのかもしれない。(とはいえ、暗殺者のエリートなんだから家業を継げという敷かれたレールを歩くのは嫌)

・二戦目のキルアを見るアニタの眼光はより厳しくなる。キルアが、自身の父親の話をしたせいもあるかもしれない。「私の父はもういないのに、こいつにはいるし、まだ生きてもいる」という、妬みや憎しみがますます増加してしまったのかもしれない。

・ついに二人いっぺんにネテロに挑む
 キルアのアドバイスで、急に動きが良くなるゴン。本当に彼は吸収力が高く、対応も早い。才能もあるだろうが、それ以上に素直に人のアドバイスを聞ける姿勢があるからこそ、身につくスピードも早いのだろう。

・二人のボールを何とか取ろうとする真剣な目を見て、「獲物を追いかける、まさにハンターの目」と評するネテロ。ハンターたるもの、基本はやはり「狩り」。獲物を見て、動き、捉えること。その全てをネテロは二人から引き出すことに成功しており、逆にいうと二人をそのようにさせてしまえるネテロが超人であり「ハンター」の頂点にいることは当然でふさわしいのだということを示している。

・キルアとゴンはコンビネーションで追い詰めるも、あと一歩で失敗。
 おそらく、初めてネテロの本気を少しでも引き出せたと思われる。圧倒的力量差に感激するゴンと、急に様子がおかしくなって逃げるようにギブアップを宣言。出ていってしまう。

・ネテロにキルアがいなくなってしまったことでギブアップするかどうか聞くも、ゴンは断る。しかし、アニタから「ネテロ会長、右手と左足ほとんど使ってない」と聞かされて驚く。そして「ギブアップして」とのアニタの言葉にはっきりと「やだ!」と返し引き下がる気はまったくないゴン。「ボールは取れなくても、右手くらいは使わせてみせる」と諦める様子は一切ない。このスイッチが入ったゴンはもう満足するまでやめないだろう。アニタも呆れて出ていってしまう。
 ゴンのボールは取れない、とわかっていても、それでも使っていないところを使わしてみせることはできるかもしれない、という恐ろしくポジティブで挑戦心の高さには感服するばかりだ。

・一方のキルアは飛行船の窓辺で自分の二面性に苦しむ。
 「殺してでもボールを取りたくなっちまう」
 「当たり前さ。お前はそう育てられてきた。オレはゾルディック家の息子、生まれながらの殺人マシーンなんだぜ」(ここでは前話のように窓辺に映る裏のキルアが喋る。やはり二面性を表すシーンとして窓や鏡を使うのはわかりやすく視聴者も入り込みやすいと言えるだろう)
 「だから、あいつにも言ったとおり、望んだわけじゃない」
 「そうかい」
 「あいつはオレが人殺しだって言っても驚かなかった。それどころか、オレのことを知りたいって」
 「おいおい。笑わせるなよ、死臭が体に染み付いたオレと握手をしてくれる奴がいると思うのか?」
 自分自身の本心と、暗殺者としての自分、相反する2つの顔と感情に板挟みにされているキルアの様子がよくわかる。きっとどちらもキルアの心の中にある気持ちで、それゆえに葛藤してしまうのだろう。もしかしたら、ここの裏の顔のキルアも(アニメでは意図していなくとも)イルミの針の影響があるのかもしれない。甘い思考を制御する目的もあったようだから、可能性としてはありえる。(詳しくは選挙編のミルキの発言より)
 暗殺者としての自分があたかも本来の自分であるかのように思わせられているのかもしれない。

Bパート

・メンチの部屋で密航者のことについて情状酌量の余地がある、と試験管に直訴しにきたレオリオとクラピカ。しかし夜這いだと勘違いされてしまう。
 「夜這いだなんて、そんな下品なことするはずがない!」とのクラピカ。
 確かに気高いクラピカがそのようなことはしないだろう。
 しかし、問答無用で刃物を振り回しながら追いかけるメンチ。
 このギャグシーンが、前後のキルアとアニタの真剣な、息を呑むシーンの間に挟まっていることで一度心を落ち着かせてくれる効果があり、本腰を据えてキルアとアニタの2人がどうなるのか、心構えを持って見ることができる。ギャグの入れ方が上手いシーンといえよう。

・キルアとアニタの戦闘
 今までのおそらく素顔であろう、無邪気なキルアの表情は完全に消え失せ、暗殺者としての顔となるキルア。思考も、もはや目の前のアニタを殺すことしか考えていない。上記のシーンのことも考えると、まだ暗殺者としての自分を制御できるまでは至っていないようだ。(本業が嫌になっているとはいえ、染み付いた殺人へのためらいのなささは簡単に消えないのだろう)

・そんな中、ゴンを見つけるレオリオとクラピカ。
 ゴンとネテロは部屋を出て、ついに甲板でボールの奪い合いをしている。ゴンは釣竿も持っており、容赦なくネテロを狙うようになっていた。本気モードのようである。
 「何というタフな小僧じゃ」
 というネテロの発言から、体力はネテロも驚く、お墨付きのものを持っていると言えるだろう。

・一方、アニタとの戦闘は続く。
 獲物を使ってアニタは応戦するも、そんな短剣の刃も手刀で折ってしまうほどの力をみせるキルア。そして追い詰める。あと一息でアニタを殺すところまでいくものの、ゴンが外で何かをやっている音が聞こえたのか、我に返って窓に走り寄る。
 「あいつ、まだやってたのか」
 とゴンを見て完全に殺しの本能は抑え込まれ、消え失せている。
 ゴンの懸命っぷりから、「アニタのために」こんな時間までずっとしていたのだとわかり、なぜ殺さないのかと詰め寄るアニタに、「お前を殺したら、あいつが怒る」と気絶させるにとどめた。
 ゴンの、キルアの中での存在がどんどん大きいものになっていることがよくわかるシーンだ。ゴンを怒らせたくない気持ちの中には、ゴンの気持ちをかき乱したくないことや、自分を責める彼を見たくない気持ちなども混ざっているのかもしれない。

・ゴンは不意打ちの一撃をネテロにお見舞いし、ついに右手と左足を使わせることに成功。
 それがわかり「勝ったー!」の一言。ネテロは「趣旨変わっとるがな」と半ば呆れる。
 ゴンの趣旨が変わってしまうのは、全編を通してよくあること。けれでも、一度こうする、と決めたらばそれを貫き通し、絶対にやめたりしないのもよくあること。
 ゴン的にはアニタのことを完全に忘れてしまって没頭していたゆえ、「勝った」発言だったのだろう。後々にお礼を言われた時に困惑しているから、図星なのかもしれない。
 ゴンは「今」を重点において生きている。今、この時が大切で、過去ももはや未来でさえ重きをおいていない。それが、積み上げてきた過去の自分の暗殺者という側面に縛られるキルアと対照的で、この話では綺麗に2人の対比が描かれているとも言える。

・ゴンに近寄る3人
 微笑ましく見守り、クラピカは何があったんだとのレオリオの問いにわからないけれでも「ゴンは満足しているってこと」はわかると返す。4人の和やかな空気の中、中心にはゴンがいる。
 周りの人たちの空気を変えてしまえるゴンは寝ていてもそれを発揮できてしまえるのだ。

・キルアに襲われた男を手当てしていた様子のアニタ。窓辺にいたところに、ネテロが寄ってくる。
 見ず知らずの他人の手当てをするほどだ。本当は人も殺せないほど、心優しい人なのだろう。
 その心境は窓の外を見る2人のシーンでもよくわかる。
 2人が見ているのは雲と朝日。
 意味深な言葉も何もなくても、通じ合っているような2人。
 朝日は希望、未来の象徴ともとれ、流れる雲は優雅で自由な象徴。何ものにもとらわれず、優雅にただ身をまかす。ネテロは、アニタに復讐よりも大切なことを、この空から学んで欲しかったのかもしれない。
 そして「長生きはするものじゃて」と一言述べる。
 もう無茶はやめなさい、命を大切にしなさい、と言外に言っているかのようだ。ネテロの優しさが垣間見える素晴らしいシーンだ。

・目的地に着く飛行船
 ピアスを渡してきたキルアに、アニタはそれをひったくる。
 「お父さんのプレゼントよ」とのことだ。
 だが、それはスパイス鉱石の結晶で、実は習慣性があり麻薬のようなものだと判明する。
 アニタはそれをキルアやクラピカ、レオリオに聞いても、信じられない面持ちだ。
 「私のお父さんは優しい人で、お父さんの周りにはいつも笑顔の人がいっぱい」と涙を溜めていうものの、
 キルアはどこか優しく諭すような声で「お前の幸せは、そういう人々の不幸の上に成り立っていたんだ」という。アニタは泣きながら「それでも、私にとっては大切なお父さんだったの」と言い返す。そこへゴンが一歩踏み出して、また受験して本当のブラックリストハンターになればいいと述べ、ついに泣き崩れてしまうアニタだった。
 これは、ほんの一例で、悪行をしているものだけに白羽の矢が立つなどということはないだろう。アニタが当初言っていたように、成功をしていたのを妬んだ結果殺されたり、嫉妬や妬みからの暗殺の仕事もあっただろう。キルアはそれでも、父親の裏の顔をアニタに教えた。それは、自分のためではなく、アニタのためだったのだろう。父親を信じ込むアニタに、真実を突きつけるのは、残酷なようでいて、アニタには大切なことだ。このまま勘違いして復讐に身を投じるよりも、その事実を受け止め、どう生きるかを模索することはアニタにとって一番必要なことだ。
 キルアはキルアなりに、アニタに手を差し伸べたのかもしれない。

・ゴンは飛行船を見送りながら「言わなかったんだ、キルアが殺したんじゃないってこと」と述べる。
 それでも、キルアは家族がやったことには変わりがないから、と述べる。だから自分が殺されたのだと思われても仕方のないことだし、ゾルディック家の一員である以上、それも受け入れなくてはならない、という心もちがよくわかる。
 ゴンに対して、「恨まれることにはなれてるから」と優しくいうのも印象に残る。
 おそらくこうやって、自分を押さえ込んで生きてきたのかもしれないなと考えさせられるいい場面だ。

まとめ

  今回は前回のアニオリの続きでボールの奪い合いという部分は原作通りだが、そのほか印象に残るアニタとのやりとり、キルアの葛藤などは全てオリジナルシーンだ。
 この話は(前回も含め)なぜか惹きつけられることろが本当に多い。特に挙げるならば、やはりキルアの窓辺に映る自分との会話、葛藤のシーンと、アニタとネテロが空を見るシーンだろう。前者はキルアの心の中がよく表現されていて、視聴者にもわかりやすい形でキルアの揺れ動く心理状態が描かれてる。後者は朝日や雲、空を使った美しい景色だけで、2人の気持ちやこれからを想像させてくれる、静かでいて印象に残るものとなっている。言葉だけがいいシーンを作るのではない、とわからせてくれる。
 次回からはトリックタワー編に突入するが、ここもまた深読しがいのある場面が多い。今から楽しみだ。

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